本当は知りたい、です
風の瞑想曲
掠り傷は消毒して絆創膏をはって何とかした。
腕も打撲程度だったのだが・・
「軽い捻挫ですね、しばらく冷やしておきましょうか。」
捻挫か・・厄介だな、明日から任務だってのに。
「あの・・任務は出来ますか・・?」
「う〜ん、本当はやめた方がいいんですけど・・この程度の捻挫ならあまり派手に動かない限り大丈夫でしょう。」
「そうですか・・ありがとうございます。」
「しかし、今日は足を冷やして安静にしていなさい。走ることはもちろん、運動なんかしてはいけませんよ?」
「う・・・・・・・・わ、分かりました・・。」
が残念そうな顔をすると医師の方が苦笑い。
「修行好きな子なんですねえ。」
「いや〜・・、そうみたいで。」
カカシと共にお礼を言うと、診察室から出た。
腕と足にはしっかり弾力性のある包帯が巻いてある。
完全に動けるようになるまで1週間はかかるらしい。
その間の運動を禁止されると色々と暇だな〜・・。
「悪かったな・・そんな顔するなよ。」
「先生の所為じゃありませんよ、謝らないでください。これは自分で勝手にケガをしたんです。」
「しかし演習でケガ人出すなんてな・・何かしてほしいことはあるか?」
「だから、もう終わったことですってば〜・・気にしないでください・・!」
「そうは言ってもね・・。」
「・・・・・・・・・はぁ〜・・。・・・分かりました、じゃあお願いがあります」
がずっと気にしていたこと。
もしカカシに会ったら聞いてみたいな、とは思っていた。
「前に異世界から来た方の話を聞いてもいいですか?」
少々驚いた面持ちでを見下ろす。
その表情が少し緩むと、そうだな・・と言って話し始めた。
「う〜ん、何て言うのかな・・が木の葉のお姫様だとしたらあの方は・・・」
・・お姫様って・・・何か恥ずかしいな。
いつの間にやらそんな呼ばれ方をされるようになってたんだけど・・何でだろう?
「・・女王様って感じだな」
「女王・・?」
「何かと先生・・4代目に纏わりついてきて、他の人には色々命令するんだよな〜・・。」
「・・・・。」
何だかカカシ先生が遠い目をしていらっしゃいます。
別の意味で、聞いてはいけなかったのかも・・?
「・・・私くらいの歳でしたか?」
「いや、20代って言っていたような・・。」
に、20代ですか・・
「・・でもさ」
「?」
「思いやりのあるいい方だったよ」
寂しげに笑うカカシ
後悔に満ちたような目をしている
「九尾を封印する日に、何故だか知らないけどお別れをしに来たんだ」
「お別れですか・・?」
「もしかして・・彼女は死ぬことが分かっていたのかもしれない。もしくは死ぬつもりだったのか・・。」
「・・・・・」
死ぬ・・か。
その人も私と同じ結論に当たったのだろう。
もっと昔の前例を聞いていたのなら、ありえない話ではない。
重い沈黙が続く・・
先に口を開いたのはカカシの方だった。
「昔、最初にこの里に異世界からの客人が来たという話は聞いた?」
「えっと・・少しだけ」
「来た事、そして去った事くらいしか聞いてないよな?」
「はい・・」
「実はこの異世界関連の話にはまだ裏があるんだが・・」
少し気まずそうに頭を掻く仕草をする。
「この世界へ来れる異世界人は、で最後らしいんだ・・。」
「へー・・。・・・・・・・・・は・・?」
どういうこと・・?
「昔、古い書があってね。そこに記されていたのが、こことは違う異世界の話・・。」
昔、火影邸が今建っているところで一つの古い書が見つかった。
白い表紙は埃で汚れ、かろうじて文字が読めるくらい。
それが忍五大国の同じ日に発見され、皆首を傾げるばかりである。
誰が書いたか分からないその書を読むと、ここの世界とはまた違う世界・・『異世界』についての話が記されていた。
不思議なことに、それにはこれから起こるであろう不思議な話がいくつも発見された。
特に一番注目されていたのが・・その異世界の話。
初めは誰も信じはしなかった。
しかし事が経つに連れて、その書の内容が本物である事を知る。
記されている事柄がことごとく当たっていくので一部の人には恐れられ、一部の人にはそれを利用しようと企む者もいたそうだ。
そしていつの日からか、不思議な空間が何十年に1度姿を現すようになった。
それはどこか別の世界へと続く一つの道らしい。
この世界で言う「チャクラ」で出来た空間。
意図的に作られたものではない事は確かだ。
「今回、そのチャクラの空間の様子がおかしかったんだ。」
「どんなふうにですか?」
「その空間は、必ず火影邸・・・さっき話した古い書が発見された所に現れていたらしいんだが・・。」
「え、でも私は演習場の・・」
「ああ。・・・・どうやら空間が歪んでいるみたいだ。」
以前とは違った空間の出現。
どういうことか、と思って色々と調べてみると1つの結論が出た。
「それは・・私がここへ来ることができる最後の異世界人・・って事と関係がある、とか?」
「察しが良いな、その通りだ。」
最後のページの部分には、の言う通り五人目の異世界人の事が記されていた。
五人目の少女現るると同時に 無限次元の繋がり絶たれる
少女 『神の申し子』なり
不可思議な神の力を用い 己の現る国に尽くし世界を守護すべかりけり
「・・・・ちょっと待って・・。」
「それから何年も経ってその空間からが現れたわけだが・・」
「ちょっと待ってください!その話からすると私が『神の申し子』って事になるわけですよね?!」
「まあ、そういうことになるな。」
「軽ッ!ってか私そんな大層な存在じゃありませんよ!!」
カカシが口元に人差し指を当てる。
・・忘れてた、ここ病院だ。
幸い周りには誰もいなくてホッとする。
「そんなこと言われてもね、実際不思議な力は使えてるわけだし。」
「って言っても私“風”しか使えな・・・・・・・あ・・。」
そういえば私静電気で雷っぽいの作れたんだっけ・・?
「見に覚えがある?」
「・・・・・・・・無いわけじゃありません。」
「じゃあが神の申し子で間違いないな。」
「・・・・・・で、でもその書って忍五大国に存在するんじゃ・・」
「大丈ー夫、もしもの時はオレがちゃんと何とかするから。」
・・あの時のような気持ちはたくさんだ。
もう後悔なんてしない。
そのカカシの言葉には何だか安心した。
でもちょっとだけ恥ずかしい気分になって、話題を変える。
所謂(照れ隠し。
「・・・・・あ、そういえば、き、聞かないんですね!」
「何を?」
「なぜ私達がこの世界の人達の名前を知っているのか、とか。」
「・・・聞いたら困るんじゃないか?」
「そりゃ困りますね。」
ものすごく困るのだが、前々から気にはなっていた。
忍の情報を知っている異世界の人間。
普通の忍なら、拷問してでも聞き出すに違いないのだが・・
「理由を話すと世界の均衡が保てなくなる、って話だったけど・・・。」
・・・・マジですか?
いや、もしかしてその人達が作ったデマなのかもしれないけど、ありえなくはない話だ。
ここは何年後にこうなりますよ〜、と言っても信じてはもらえないだろう。
しかし、知らないはずの情報を知っている人間だ。その事については一応警戒すると思う。
・・・それでこの世界の未来が変わってしまったら、えらいこっちゃだ。
「・・・・もしかして違うの?」
「へ?え、え〜・・っと・・実はあまりそういうの知らなくて・・。でも世界の均衡が乱れるってのは確かだと思います・・。」
もしかして色々そんなふうに異世界の人間の設定とかされてるのかな・・?
そうだとしたら無闇にこの世界の話は出来ないね。
「・・えっと・・・そうだ、その話の書見せてもらえますか?」
その書を見れば何か他に分かるかもしれないと思ったけど・・・
「あー・・・・・無理だな。」
「え、どうして?!」
「消えたらしいんだよ・・、がこの世界に来たその日に。」
の現れた夜・・3代目が読み返そうと書を開きその最後のページを見ると、見たことのない新しい文章が加わっていたそうだ。その書は読み終えると同時に消えていったらしい。
「多分あれは宛ての言葉だろうね。」
「な、何て書いてあったんですか?!」
「『初心、忘れるべからず』」
「・・・・すいません、意味は・・?」
「んー、なにごともそれを始めたときの真剣な心構えや決意を、いつまでも忘れるなということじゃないかな?」
心構えや・・決意・・。
それって私がこれからやろうとしてること・・?
「・・そうですか。それじゃ、私の前にこの世界へ来た方達の資料とかはありますか・・?」
「・・残念だがそれも無い。」
「あの書と同じように消えた、とか?」
「いや、作られていないんだよ。異世界の人間の情報は、その国だけの極秘情報だったんだ。」
「・・・極秘?」
「ああ・・。だから昔の話とかはよく知る事が出来なかったんで、オレからの情報はここまでが限界。」
「そう・・ですか。・・・・でも何で極秘なんですか?」
別に知られたって構わないと思うのだが、なぜそこまでして隠す必要があるのか・・?
「書いてあったらしいよ、その書にね。出来るだけ里のものはその話を広めてはいけないってね。悪用しようとする奴から守るためなんだろうけど。もし情報が盗まれたらそれはそれでそいつの性質や弱点、そしてどんな技を使うのか、っていうのが各国に広まる可能性があるし。」
そっか・・、悪用しようなんて考える人達が一斉に国に攻めてきたら怖いもんね・・。
・・・てかそっちが本当の目的だったりして。
「いいんですか?そんな極秘情報を私に話しちゃって。」
「には知っていてほしい事だからね、一応『神の申し子』だし。」
「はあ、そういうもんですか・・。」
「ま、その異世界人が凄い事して世界に名前が知られるって事はあったどね。」
「それじゃあ極秘とは言いませんよ!!」
もしかして里の者が広めるんじゃなくて、その異世界人さん自身が広めるって事は良いの?
なにそれ、もうさっぱりだよ〜ッ!!
「・・・それと、もう一つ。」
「・・・何ですかー・・?」
もう混乱するような話はいらないよ〜・・。
「に分かりやすく説明すると『神の申し子』は、その歩もうとする道が少しでも違うと、その結果が黒にも白にもなるんだ。」
「余計に混乱してきました。そして抽象的すぎて分かりません。」
「つまり・・・の行動しだいで、世界の崩壊を招くことさえも出来るって事。」
せ、世界の崩壊って・・・・!
「大袈裟すぎますよ!」
「一応事実だから。」
「そんなこと言われても・・!!」
「そんなに思いつめないの〜。もう少し気持ちを楽にね。」
こんな話聞いて気を楽になんか出来るか〜〜ッ!!!
「それじゃ、は世界の崩壊への道を歩みたいのかな?」
「い、いやですよそんなの!」
「・・・・ほら、ちゃんと答え出たじゃない。」
「・・え?」
の慌てようがピタリと止まった。
カカシはの頭を軽く2回ほど撫でると、ニッコリと笑った。
「自分の進みたい道、決まってるのならそれを歩めばいい。思いつめる必要なんかは無いよ。」
カカシ先生の言葉を聞いて、スッと心が冷静になった気がする。
『自分の進みたい道を行く』・・・か。
何だ、もう答えは出てるじゃないか。
・・・私、なにをそんなに慌ててたんだろう。
考えるのがバカらしくなってきた。
「はたけ様!さまの足と腕の冷薬、氷嚢(が出来ましたよ!」
「はい、今行きますよ!・・・・さてと、行こうか。」
顔を上げたの表情は、思っていたよりも明るかった。
「はい、行きましょう先生!」
少女の足は、ゆっくりと光の道を歩み始めた―――