こうして居る今に、失われて行く命と誕生する命が交互に、そして同時に世界を離れ、そして辿り着く。
世界中の半分は笑って、泣いて、怒って。沢山の人が、沢山の想いを抱えて毎日を過ごしていくんだ。
そしてその世界の一部である私もまた、その中のたった一人にしかすぎない一人のヒトだ。
でも、たった一人しか居ない世界を支える沢山の腕の一つ、そう想えばこの命は大切な物なのだと一人思う。
こんな醜い世の中でも、私達生き物にとっては掛け替えの無い大切な舞台。
人間というこの世界の文化の創設者の手から作られた、作られてしまった沢山の破壊を生む兵器は、一体私達に何を与えてくれるの?
友が死んだ。
その細い銃口から飛び出す鉄の玉を体中に浴びて、この世を去った。即死だった。
空から止めど無く降り注ぐ死の弾丸と雨を掻い潜りながら、ただただ走った。何を考える事もなく、生残る為に私は走った。
死んだ友の片腕を抱えながら、まだほんのり暖かな、既にこの世を去ったヒトの人肌をいつまでも抱き締めて。
小さな少年が死んだ。
その小さな体に沢山の思い出を詰めて行く、希望満ちた体が、たった一発の爆弾によって跡形も無く吹き飛んだ。
砂煙のあとに、飛び散るのはかつての少年の体。巨大なスコップで彫り上げられたかのような地面の後。
彼の持っていた、彼によって詰まれた彼の母への弔いの花。コスモスの花が黄色く輝きながら中を舞う。まるで、少年への弔いの舞いのように。儚く。
女性が死んだ。
つい先日、人生最大の祝福を受けた彼女は今日、夫を庇い敵の剣で首と体の楔を解かれた。
白いベールに包まれ、花のように微笑んだ彼女の笑顔は今、地面の上に無残に転がり大きな瞳が悲しげにこの世を見つめる。
残された夫は何を思ったのだろう。むせびなく声が止まる日はなく、ただただ突き付けられた現実に悲しくて悲しくて。
もう、彼女は二度と微笑む事はないのだから。ごろりと転がった彼女の蒼白の体の、薬指で光る眩いダイヤモンド。
瓦礫の山、そこはかつての王都。栄華を極めたあの日は、まるで無かったかのよう。面影など微塵も見せずに。
亡くなった命が今も埋もれる市の都市で、赤ん坊の小さくか細い泣き声がゆっくりゆっくり響く。
この世に降り立ったばかりの小さな足がばたばたと母の胸の中で羽を羽ばたく様にまたたく。猿の様にしわくちゃだけど、赤ん坊は泣いていたけど、
それを抱いている母親は、涙を浮かべて笑っていた。
赤ん坊の閉じられた瞳がはじめて写す光が、眩く、そして本当の太陽の光であるように。
失われた命と、今ここに誕生した命が、出会うことなくすれ違った日が、今日である。
戦争が始まって、戦争が生まれて、何千年もたった今日。
人は死んで、人は生まれた。泣きながら、笑いながら。この世との別れの日へとゆっくりと歩く。歩く。
世界中の人が泣いている今日、世界中の人は笑っていて。悲しみも喜びも同時に起こってるこの世界。
たまらなく愛しい世界がここにある。(オリジナル/戦争)