ますたーのゆううつ
だいろくわ
「姉さん…!」
「ええ…やったわ!」
2人の女性、姉妹は思わず手を握りあった。
それが料理の完成や男性を射止めたと言うならまだ可愛げがあるだろう。
完全犯罪を成し遂げたら? それでもまだ良い方かもしれない。少なくとも被害者以外に被害は及ばない。
今2人が成し遂げたのは前代未聞の事であった。
すなわち、セイバーのダブル召喚。
召喚の陣には2人の女性がそれぞれ剣を立てて参上していた。
「サーヴァントセイバー、ただいま参上しました。」
「サーヴァントセイバー、呼びかけに応じて参上した。」
2人が述べる言葉は全く同じ声。それどころか姿も全く同じだった。
2人とも10代後半の少女ではあったが、男装しても違和感がないぐらいの美人だった。
が、その2人の雰囲気はまったくと言っていいほどに対照的だった。
「それで、ワタシのマスターはどちらだ? 早いところ行動を起こそうではないか。」
その内の黒い方が述べる。
姉妹は互いの顔を見る。
どちらが自分のサーヴァントだ?
「んー、じゃあ貴女の方がちょっと魔力使う事やってみなさいよ。それで分かると思うから。」
「断る。」
「な…っ!」
いきなりの否定に姉の方が驚愕の声をあげた。
「マスターかも分からない者の言うことをどうして聞かねばならんのだ。
そもそも聖杯戦争は所詮サーヴァント対サーヴァントの戦い。マスターなどただ邪魔なだけではないか。」
「こ…この…!」
姉はその聞き捨てならない発言に怒り心頭。
「サーヴァントよりマスターが弱いからつけこまれるんだ。幸いワタシには単独行動があるからそれを駆使して1人で行動を…。」
「うるさーいっ!」
「って姉さん!まさかこんなところで令呪を…!」
「まずはその高慢な態度を改めて、マスターに絶対の忠誠を誓いなさいっ!!」
部屋一面に輝く光。当然姉の方から令呪が1個消える。
息を荒くさせる姉。それを呆然と見つめるサーヴァント2人と妹。
「…姉さん…。」
「ごめん。我慢できなかった。」
しばしの沈黙の後、こうは言ったけど、もちろん後の祭りだ。
「あー、何と言うか…。」
「えっと、そ、それで今の令呪、どちらの方が効きましたか?」
「不本意ながらワタシの方だな。」
心底呆れかえってそうつぶやいたのは黒い方だった。
「貴様…魔術師によって多少の制限は感じられるが、大雑把すぎてそこまでの制約にはなっていないようだな。」
「…そう…。」
「そう落ち込むことはないぞ。そなたの魔力は現代の魔術師の中では申し分ない方だ。期待しているぞ。」
「そう、こっちこそあんたに期待するからね。」
「無論、阻む敵は切り伏せよう。」
にっ、と笑みを浮かべて姉と黒いサーヴァントは握手をかわした。
「それじゃあ貴女が私のサーヴァント、でいいのでしょうか?」
「ええ、貴女とはつながりを感じます。私の剣に誓い、貴女には聖杯を授ける事を約束いたしましょう。」
白いサーヴァントは笑みを浮かべる。
が、次の瞬間には白いサーヴァントと黒いサーヴァントは対峙していた。
「ではまずこの者から斬り捨てるとしよう。」
「このような邪悪な者は私が倒しますので、マスターはお下がりください。」
「「ええっ!?」」
いきなりの展開に姉妹は驚いてしまう。
「ってセイバー、私たちは姉妹で聖杯戦争に参加してるから、同盟を結んでるの。決着は他のサーヴァントを倒してからにして。」
「そ、そうですよ。そうならない事を願ってますけど、今は敵対しないでください。」
「「…。」」
サーヴァントは持っていた剣を鞘にしまい、ため息をついた。
明らかに不満そうだ。と言っても黒い方は相手を斬り捨てられない事が、白い方は黒い方を放置しておく事が、だが。
「じゃあとにかくステータスを…。」
クラス:セイバー
マスター:エーデルフェルト(姉)
真名:ヘルヴォール
性別:女性
身長:155cm
体重:44kg
属性:混沌・悪
能力
筋力:A 魔力:A+
耐久:C 幸運:E
敏捷:B 宝具:A+
保有スキル
対魔力:A 乗馬:-
単独保有スキル
単独行動:A
略。
魔力放出:A
魔力を瞬間的に放出する事によって、能力を向上させる。
狂化:D
宝具によって追加されたもの。理性が若干失われて、戦闘をかきたてる。
宝具
テ ィ ル フ ィ ン グ
『全てに破滅を呼びし魔剣』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大捕捉:1人
北欧神話最凶の魔剣によって相手に呪いを与えつつ攻撃する。敵の対魔力によって呪いのレベルは反比例する。
宝具を使うと一定時間1ランク幸運がダウンする。
クラス:セイバー
マスター:エーデルフェルト(妹)
真名:ヘルヴォール
性別:女性
身長:155cm
体重:44kg
属性:中立・善
能力
筋力:C 魔力:B
耐久:C 幸運:A+
敏捷:B 宝具:B
保有スキル
対魔力:B 乗馬:D
単独保有スキル
ルーン:B
宝具によって与えられた能力、ルーン魔術を所持する。
単独行動:C
略
退却:B
引き際を心得ており、戦闘から離脱しやすくなるもの。
宝具
テ ィ ル フ ィ ン グ
『全てに悲劇を呼びし魔剣』
ランク:B{A+} 種別:対人宝具 レンジ:1〜2 最大捕捉:1人
北欧神話最凶の魔剣によって相手を攻撃する。黒の方と違い、呪いの追加効果はない。が。
「やっぱり同じ真名か…。さすがに双子姉妹の剣士なんて聞いたことないし。」
「でも姉さんの方が能力が高いですよ。やっぱり。」
「…まあ、そうね。でもそっちの方がマスター思いな気がするけど?」
「…確かにそうですけど、やっぱりサーヴァントは戦闘も考えた方が…。」
姉妹は互いのセイバーを見比べて、率直な感想を述べた。
「まあいいわ。じゃあ後片付けよろしくね。」
「えっ!? 姉さんちょっと…!」
「行くわよセイバー。」
「分かった。」
「姉さんってば…!」
姉は自らのセイバーと共にとっとと部屋から出て行き、後に残るは妹と彼女のセイバーのみ。
「…いかが致しましょうか、マスター。」
「そうね…まずは一緒に片付けましょうか…。」
「…分かりました…。」
2人は半泣き状態で部屋の片付けにいそしむことになった。
続く…かもしれないし続かないかもしれないし。
つづく
出典:北欧神話より
ティルフィングは北欧神話の元で多くの栄光と破滅を呼びし剣で、相手と持ち主に必ず破滅を呼び込むとんでもないもの。ただ1人
ヘルヴォールのみがこの剣の持つ呪いを受ける事なく、人生をまっとうした。が、彼女の息子もこれにかかって災厄に見舞われているので
果たして幸運と言うべきか、それとも…。
第6段はセイバー召喚。一番悩みました。自分の頭の中ではジャンヌ・ダルクぐらいしか思いつかなかったので色々と探してみる事に。
始めから女性剣士にしようかとは思ってましたけど、それがここまで大変だったとは…。多分数時間バカみたいに探したような…。
かの女傑カテリーナ・スフォルツァ、フランス革命でのシャルロット・コルテ、女海賊アン・ボニーorメアリ・リード?で、とうとう見つけた
のが彼女、ヘルヴォールでした。
「セイバー2人でサーヴァント8人?」の意見はごもっともだと思います。すみませんが「セイバーは2人が1つで識別された」でご勘弁ください。
ダブルセイバー召喚が既に荒業ですし、そういったイレギュラーがあってもおかしくはないと言う事で納得いただければ幸いです。
それでは。
2006年5月28日