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南米、とある土地。
観光によって友人たちと共に奥地にやってきた青年。
社会人になってから数年目にして初の外国旅行だった。
仲間と共に資金を集め、いざ出発をした。
これをかなえるために仕事もがんばった。残業もした。
外国旅行は少ない休みに入れた、正に自分への豪遊だった。
仲間とてそれは同じ。皆が再び集まって学生の頃みたいに旅行する事を楽しみにしていた。
きっかけはふとした事で入ったサークル。
それは外国への旅行を主としたもので、ツアーに頼らずに、独力で世界の素晴らしい箇所を巡れるようにする目的だった。
それによって都会、観光名所はおろか、田舎だろうと見知らぬ土地だろうと赴き、奥地でキャンプをしたりもした。
言ってはなんだが、彼は海外の旅行に絶対の自信を持っていた。
旅をする事そのものこそが彼にとっては至高の経験であり、生きる情熱であった。
仲間の中には旅をする事それじたいを仕事代わりにしている者もいる。彼はそれにあこがれていた。
だから、その彼が言い出した南米の奥地への旅行を青年はためらわず賛成した。
そうして青年たちは飛行機に乗り、意気揚々と南米へと降り立つ事になる。
ジャングル、彼らはそこにやってくる。
気持ちを高ぶらせながら進んでいく一行。
食事は草や動物を狩って済ます。缶詰や携帯食料もあるけれど、それにはほとんど頼らないで進む。
キャンプをしながら進む事数日。
日数的にもそろそろ引き返す時期にさしかかっていた頃、彼らは偶然にも現地の村を発見する。
欧州の列強によって運ばれてきた奴隷や移民ではなく、その土地に長年住み続けた者たちの村だった。
衣服や道具など、些細な程度には文明を取り入れているけれど、それ以外は長年生活のスタイルを変えてはいなかった。
青年の仲間の1人がどうやらその人たちの言葉を知っていたらしく、交渉に入る。
日は既に傾きかけ、夜となってきていた。
火をおこしてキャンプをする事もできたけれど、既に村の生活圏に入ってしまっている以上むやみにそんな事はできなかった。
だからこその頼みに、村の人は快く迎え入れてくれる。
青年たちはすぐに村の人たちと打ち解けた。
村の人たちは青年たちを歓迎し、その村でのご馳走をふるまってくれた。
意外にもそれは青年たちにもおいしく感じられ、食が進む事になる。
夜、村の神話を聞く事になった。
青年たちの経験から言うと、信仰には森、太陽、大地、水といった自然を崇拝する事が多い。
キリスト教やイスラム教のように、1人の救世主を崇拝する事はめずらしいのだ。
ここはジャングルの奥。ならば森、水、太陽に信仰を置くと思っていたのだ。
が、実際には違った。
その村で伝わる伝説はそのどれでもなかったのだ。
森でも、水でも、太陽ですらなかったのだ。
信仰の対象は、水晶だった。
青年たちはそれにとてつもなく興味をそそられる。
今までそのような信仰はなかったのだから、珍しくも思うのだろう。
はるかなる昔、それは近くに光臨した。
それは森も、水も、土も。全てを作り変え、自身の世界を形成したのだ。
そして、それを遠くから見た人々はこう言った。
神が光臨し、神の世界をその地に創っている、と。
ゆえにその村ではその地を聖地として崇め奉っている。
それを信じない者はこの村にはいない。
それは例え西洋の文明に毒されても、なお信仰を変える者はこの地からはたった1人たりとも現れていない。
なぜなら、キリスト教の神、イスラム教の神、その他あらゆる神と違い、
その神は既に光臨しているのだから。
青年たちはそれに非常に好奇心をそそられた。
彼らとて無神論者ではなく、自分の信じる神が存在する。
だが、彼らの信仰は何一つ神の存在を証明してはいない。
曰く、最終日に神は光臨する。曰く、神は万物に存在する。
だがそのどれもが立証されるはずもなく、現代ではこういわれている。
神は死んだ、と。
だからこそ彼らはそれを確かめてみたくなった。
神が実在するなら、この目で見てみたいと。
それがどれほど身の程知らずな行為かも分からず。
それは当然の事ながら村の人たちには語らなかった事だ。
だが、村の人たちは確信していた。
彼らは、必ず聖域に足を踏み入れてしまうだろうと。
代々この地を住まいとする村の人たち、長い歴史の中には彼らへの来訪者もいる。
中には紳士のような人がいて、中には魔法使いのような人がいて、中には全身鎧を着込んだ戦士もいて。
誰もが村で語り継がれる『神』について聞き、好奇心をそそられるのだ。
それでも聖地の外から聖地を見るだけで済ませる者もいる。
そうして彼らは超常現象のような何かを見たと言うのだ。
そして、その後の人生は一変する。
その好奇心のままに聖地へと踏み込むものもいる。
だが、その誰一人として帰って来た者はいなかった。
聖地から下界に戻ってきたものは、誰一人として……。
その踏み込んだものの中には人間ではなく、悪魔もいたという。
この村を襲った悪魔もまた聖地へと乗り込んでいったが、結局帰ってこなかった。
神の前では悪魔すら児戯に等しい、とばかりに。
その経験と言い伝えから考えると、この青年たちは間違いなく聖地に踏み込んでいくだろうと思っていた。
そして、それを止めようとはしなかった。
注意はした。あとは自分の責任だとばかりに。
天に唾すれば、帰ってくるのは自分自身へなのだから。
そんな中、村に新たなる来訪者がやってくる。
夜遅くまで歩いてきたため、衣服は所々が破けていた。
その20代前半の男性もまた旅人だという。
彼もまたこの村に一晩泊めてもらうことになり、神話を聞く。
だが彼の表情は村人の誰もがみた事のなかったような、思いつめた表情であった。
それを真剣に受け止め、それを元に自分の考えをめぐらせていたのだ。
それが村の人たちにはとても意外で、気になってもいた。
そうして眠りにつく。それぞれの思いを胸に。
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青年は朝早く目覚めていた。
旅行の最中でも朝は遅く、仲間に起こされていた自分からは考えられない、と青年は思った。
顔を洗うために川へと向かう。
そこに立っていたのは昨日の夜であった来訪者だった。
彼は腕を組みながら朝日の方を眺めていた。
そうして微動だにしない。
青年はその来訪者に疑問を抱きつつ、顔を洗う事にする。
朝日が昇ったすぐ後だというのに村の人たちは活動を始めていた。
朝日が昇って一日が始まり、夕日が沈んで一日が終わる。
その事に全く変わりはなかった。彼らもまた太陽と共に生活しているのだ。
ふと気がつくと、川では女性が洗濯物をしていた。
その中の1人の少女と青年は目が合う。
少し可愛いな、と青年が思っていると、
絶対に聖地には入らないでください。
彼女はこう青年にも分かる言語、それでもたどたどしい言葉で述べ、洗濯を続ける。
聖地が汚されるのが嫌なのだろうか、観光名所と化すのが気に入らないからなのか。
それとも、神罰を恐れて?
青年には判断しがたかったが、仲間の中では既に聖地へと足を運ぶ事は決定事項だった。
特に反対する理由もなく、むしろ好奇心をそそられるその聖地に足を運ぶ事に青年もまた決めていた。
そんな折、来訪者は青年に対して問いかける。
それは来訪者にとっては純粋たる疑問だった。
終末の日が来た時、神が人類の敵となってしまった時、どうするのか、と。
青年はそれを何らかの冗談だと捉え、自由に自分の意思を表明する事にした。
何も考えることなく。
そうならないために人類は知恵を持っているんじゃないか、と。
来訪者はそうか、と言ったっきり何も言わなかった。
まるで全てを悟ったかのように。
道はジャングル。いつものような道のりであった。
草を掻き分け、道なき道を進んでいく。その時間が延々と続くのだ。
目指すは、村人たちが話してくれた聖地の方向へ。
一歩一歩を踏みしめながら青年は心躍らせる。
いくら自分の信じる神とは違う神とは言え、既に降臨していると聞けば胸高鳴るのに無理はなかった。
神との出会いは、間違いなく自分の人生を一変させるだろう。
彼はそれぐらいに考えていた。
神に触れること、それがどれほどの間違いとも気づかずに。
そうして歩く事半日、日も真上に昇っている。
そうして彼らは目的の場所にたどりついていた。
そしてその光景を見て彼らは衝撃を受けた。
目の前に広がるのは、間違いなく異界だった。
そして青年はある事を悟った。
自分たちは、この地に踏み入れてはならない、と。
そこに広がるのは水晶の世界だった。
地面はあらゆる色で輝く水晶がいくつも地面に敷かれている。宮殿で言うなら大理石のようにして。
木もなく、そこには代わりに水晶がそびえたつ。
そこに広がる空気、雰囲気はこの世界のように見えてそれも全くの異質。
まるで、映画で出てくるような異世界がそこには広がっているのだ。
青年はその水晶でできた渓谷を見てこんな事を思った。
なんだか蜘蛛の巣のようだな、と。
現地の人々の言葉もうなづける。
これはもはや地上に存在する世界ではなく、神の領域だと。
ではその世界を形成する神とは一体どのようなものなのだろうか?
なぜ今、神はこの地にやってきたのか?
そして、なぜ神は何もしようとしないのか?
神の目的とは……?
青年は恐れた。
神に人間が近づけるはずがない。
神の言葉を体現する救世主、預言者とて神ではないのだ。
神は、人間では絶対にたどりつけない、理解できない、絶対的な存在だからこそ神だというのだから。
ゆえに、その異世界はただその外から眺めるだけでも脳裏に焼きつく。
そして否応なしにその領域に足を踏み入れ、その全てを知りたい衝動にかられる。
それがどれほど危険な事かも承知で。
だが青年は恐れた。
そこに足を踏み入れる事を。
人間が知ってはいけないことがそこにはある気がして。
だから彼は主張した。
神の領域を見るだけで十分だ。足を踏み入れれば二度と戻って来れなくなる、と。
人間が足を踏み入れていい世界ではない、と。
だが他の皆は神の事をどうしても知りたかった。
神を信じるのなら、どうしてもそれを見、知り、他の人たちにも知ってもらいたいと。
もはや彼らの中で自身の信仰は死んでいた。
目の前に神が体現されているのに、どうして他の神を信じる事ができよう?
そして、神が目の前にいるのになぜ引き下がる事ができよう?
青年は彼らの前に立ちはだかる。
青年は神との謁見よりも仲間の方が大切だったから。
彼らは青年を気絶させた。神との謁見で考えは支配されていたから。
そうして彼らは青年をそのままに、渓谷へと足を踏み入れるのだった。
青年が気づいたのはそれから数十分が経過した頃だった。
青年を起こしたのは、朝で出会った少女と来訪者だった。
少女はどうしても止めたかった。青年の仲間たちがその異界に足を踏み入れる事を。
なぜなら、そうして入っていった者たちを彼女も見ていたから。
そして、誰もが帰ってこなかった事を知っているから。
神は確かに存在する。だからこそ人が足を踏み入れてはいけないのだ。
だがもはや遅い。青年の仲間は絶対に帰って来れない世界に足を踏み入れた。
自分たちにできるのは、ただ引き返すことだけだった。
だが青年はあきらめなかった。
神と出会う前ならまだ間に合う。仲間を取り戻せると信じて。
いざとなれば自分だけでも犠牲になり、仲間を救ってみせる、とかたく決めて。
だがその考えはまだ神を甘く見ている証拠だった。
神が絶対なら世界に足を踏み入れるだけでその運命は決定されるようなものだ。
青年は、その事を全く考えていなかった。
少女の制止を振り払い、青年はその異界に足を踏み入れる。
仲間を連れ戻せると自分自身を説得し、逃げ出したい衝動を必死にこらえて、震える足を必死にささえて。
それをみた来訪者は決意をした。
この青年の思いを無駄にしたくない、と。
その思いがある限り、未来はあると。
だから来訪者は青年に肩をかす。
青年が仲間を連れ戻せると信じて。
柔らかい。だが硬い。
そんな水晶でその世界はできていた。
谷も、地面も、全てが水晶でできていた。
道はまるで蜘蛛の巣のように形成されていて、自分たちはそれにかかった獲物のような錯覚を覚える。
一行はその異世界に身震いをしながら先へと進んでいく。
神は人の手にしていけない存在だからこそ神、それを理解しながら。
その神を一目みたい、神の言葉を聞きたい。その衝動にかられながら。
体中が警告を鳴らす。
それも抑える。
まるで神という存在に操られたかのように、足は進んでいく。
そして、蜘蛛の巣で言うならちょうど中心の場所。
そこには確かに存在した。
村の人々が語り継いできたものが、自分たちの目的の存在が。
彼らは、神とついに遭遇した。
だが、同時に悟ってしまった。
やはり神は絶対的な存在だったと。
1人はその存在そのものに圧倒され、崇拝した。
1人はただ神との遭遇に感動した。
1人は神の目的を知りたくなった。
だが、他の者はその存在に恐怖した。
神と対峙する事は、人間に許されし行為ではないと悟ってしまった。
そして、一秒でも早く神の存在を忘れ、いつもの生活に戻りたいと心の底から思った。
だが悲しいかな。確かに青年の言葉はあっていた。
その世界に足を踏み入れれば、決して抜け出す事はかなわない巣を形成したもののためだけの空間。
そこに捕らえられたものが抜け出す術は存在しないのだ。
『神』がそのカタチを変える。
その存在感はこの世界、いや、あらゆるものをはるかに上回っていた。
一部を除いて一行は思った。
なぜこの地に足を踏み入れてしまったのか。なぜ青年や村の人の警告を聞かなかったのか。
神は、何も人間に微笑んでくれるだけではないのだとなぜ知ろうとしなかったのか。
神は神でも、その存在は、人間に終焉をもたらす神だった。
あえて『神』以外の言葉を使うなら、絶対的な侵略者。
その存在、水晶の蜘蛛は正にそれだった。
その時点では誰もが悟っていた。
逃げる事も立ち向かう事も、存在する事も許されていないと。
その時点でその一行の考えは大きな開きがあった。
神の手で葬られる事に感動を憶えたり、後悔の念でうずまいていたり。
一行の考える事は全てその一人一人の本性から出るものだった。
走る事で何とか一行を視界に治めることに成功した青年もまた悟ってしまった。
もはや彼ら、いや、自分たちが生きてこの地から出る事はかなわない、と。
立ちすくむ青年はもはや何もできなかった。
青年ばかりではない。青年の仲間全員も何もする事はできなかった。許されてはいなかった。
そして、全てを受け入れる。
この状況、希望、後悔、絶望。あらゆるものを。
青年が持つのは後悔だけだった。
自分を限りなく責めた。
自分のふがいなさ、自分の弱さ、あらゆるものを。
もう少し自分がしっかりしていれば、こんな状況にならなかった、と。
一秒もかからずに一行の存在はこの世界から消える。
そのはずだった。
来訪者は意を決して己に光を収束させる。
光が集まり、人のカタチをつくりだす。
そして、一際大きな存在と化した。
青年は思った。
来訪者、彼こそが神のような存在なのではないのか?と。
そこに現れたのは、光の巨人だった。
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水晶の蜘蛛。この存在について現在で分かっている事はあまりに少ない。
だが、誰も知らない事実ならある。
西暦が始まる前、この存在は一言で言うならば、侵略者だった。
文字通り、この存在は地球以外の星からやってきた、地球を自身の星のようにするものだ。
だが、いわゆる宇宙人とは一線を引く存在でもある。
そう、神という言葉もある意味で正しいかもしれない。
なぜなら、星という単位で見るならその存在は星の中で最高の存在なのだから。
だがその存在の来訪目的が達成されるのは数千年は後の話となるだろう。
その存在は、その時が来るまで待ち続ける。
己の世界で閉じこもり、その時を。
光の巨人。この存在について現在知っている者はいない。
ただ、どこかの国で限りなく近い存在がフィクションとして存在する事は否定しない。
彼の住んでいた星は父なる星を失った。
母なる星を大地とするなら、父なる星は恒星と考えれば。
本来なら父なる星を失えば母なる星はその生命に終焉を迎えるはずだった。
だが、その星に住むものたちは諦めなかった。
自分たちの手でその父なる星を作り出し、再び母なる星に光をもたらすことに成功したのだった。
それがどれほどの意味を持っていたのか知らずに。
結果として、以前のような生活が戻る事はなかった。
人の身で神の業を行おうとした罰だったのか、彼らは超人的な力を得てしまった。
そして、他の生命にもその影響を及ぼす結果となってしまう。
その者たちは決意した。自分たちが得た力をこの宇宙に真の平和をもたらすために用いる事を。
そうして彼らは果てしなく広い宇宙へとちらばっていったのだ。
時として星の声を聞き、時として星に住むものの声を聞き。
そして彼らは幾度となく見てきた。星と星に住むものの争いを。
それはどれもが悲惨な結果しか生まず、彼らは自分たちの無力を悔やんだ。
彼らは、決して神ではないのだ。
そしてこの地球、彼らはそこに西暦以前にもやってきている。
そして、かつて父なる星を失う前の母なる星に酷似している事に感動する。
だから彼らは、その星を守ろうと誓ったのだ。
この地球を母なる星のようにしてはいけない、と。
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青年は光の巨人と水晶の蜘蛛。来訪者と侵略者の戦いを見る事はなかった。
ただ必死になって自分の気を奮い立たせ、仲間を逃がそうとする。
仲間も全力でその場を離れようとする。
青年は来訪者に感謝した。
彼がいなければこのような行動を起こせなかったかもしれない。
彼の存在は青年にとっては救世主と同じだった。
仲間は様々な思いを持っていた。
それは神なのか、魔王なのか。それは彼らにはわからない。
だが、来訪者も侵略者も、自分たちの知ってはいけない者たちだと瞬時に悟っていた。
必死になって逃げる。その異界から。
必死になって逃げる。彼らから。
必死になって逃げる。現実に戻るために。
このままでいけばいずれ人類はこの星を滅ぼしてしまうだろう。
それを防ぐため、人類を滅ぼす者たちと行動を共にする事が侵略者の目的なのかもしれない。
あるいは、もっと別の意味もあるかもしれない。
星の声を聞いた来訪者もまたその事を危惧していた。
星とそこに住むものが戦う事になれば、終焉しか道は残されていない事もまた。
だが、その最悪の事態を回避する未来もまた来訪者は信じていた。
だからこそ来訪者は侵略者と戦う。
あの青年との会話だけで来訪者が戦う理由は十分だった。
人類は、愚かではない、と。
そのための力を運命のいたずらか、彼らは授かった。
星と星に住むものが、平和となれるよう手助けできる力を。
そのために、起これ。奇跡よ――!
来訪者の放った一撃は、星サイズの大きさの生物すら倒せるほどの威力を持つ。
それをもっても侵略者を倒す事はできない。おそらくは短時間で再生し、活動を再開するだろう。
だが来訪者の目的は侵略者を倒す事ではない。
彼の目的は、人類の未来を信じる事なのだから。
青年たちは無事に聖地から脱出する事ができた。
くしくもそれが生還できた初めての者たちとなっていた。
とにかく青年は喜んだ。
自分たちに生があることを。
そして、侵略者、来訪者。この自分たちよりも高き存在に会えた事を。
その先何が起ころうとも、これほどの劇的な体験を前にしては無意味となるだろう。
彼は未来を感じていた。
その日のうちに青年たちは村に戻る事ができた。
そして青年たちはその事を村の人に詳細に渡り話す事となる。
水晶の蜘蛛、光の巨人。その異界から足を踏み入れた途端、彼らはなす術がなかった事も。
神、それはその村で長く語り継がれる事となるだろう。
その時がくるまで。
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結論から言うと青年たちの一生には全く変化がなかった。
と言うのも、彼らは秘密を隠匿する者たちによって記憶を全て抜き出され、消去された。
したがって彼らから侵略者と来訪者に関する記憶は一切残らず、生活に変化をもたらすことはなかったのだ。
ただ青年は時々思う。
自分の一生どころか全てを一変させる存在とであったのかもしれない、と。
それが分からないまま彼はいつもの生活に戻っていった。
侵略者は待ち続ける。
その時が来るまで。
誰にもその目的は分からず、ただ絶対的な存在を閉じ込めていた。
自身の作った世界に。
来訪者はその星から去っていった。
その時が来ない事を願って。
人類にはまだ希望も未来もあるのだから。
彼の願いは唯一つ、宇宙の平和だ。
了