「おーい、イヨ、あみんち行くぞー!」

いつもどおりイヨの家の前で声を上げる。
だが、応答が無い。
その後何度も何度も呼びかけてみても、動いた気配すらない。

「おい!さっさと起きろ!」

さすがに待ちきれなくなりケンタが強引に部屋に押し入る。

「ケンちゃ…」
「て、イヨ!?」

そこにはぐったりと床に横たわるイヨの姿があった。




うつせばなおる




「ったく、ただの風邪かよ。びっくりさせやがって…」

とりあえずイヨをベッドに寝かせ、額に氷水でしぼったタオルを乗せる。

「気持ちいいナリー」
「おとなしく寝てろよ。」
「えー、つまんないー。」
「アホか。」

そんな会話を交わしながらケンタは偶然会ったりんごを剥き始めた。
きれいな赤いリボンが途切れることなく落ち、皿の上に積み重なってゆく。
その様子をイヨは珍しそうに眺めていた。

「ケンちゃん意外に器用ナリね。」
「意外って何だ意外って!りんごやらねーぞ!」

無意識にポツリとつぶやけば即座に不満そうな声が戻ってきて

「それはいやだにょ。」

そういいつつ切ったばかりのりんごを口に含めば、ケンタは不満そうな顔のままため息を漏らす。
2つ目3つ目と食べる間もその顔は変わらない。
その様子がなんだかおかしくてイヨはふ、と微笑んだ。
それがまたケンタの癪に障ったらしい。

「…笑うな。」
「えー?」

イヨがしらばっくれると、イヨが食べかけていたりんごを奪った。

「笑ったから没収。」

そして自らの口に放りこんでしまった。
ちなみに、最後の一つである。

「あー、りんごー!」
「大丈夫そうだが薬かなんか買ってきてやるから、ちゃんと寝とけよ。」

ケンタのニカッっと笑った笑顔が扉の向こうに消えた。

「むー。」

そんなにしんどいわけではないが、やはりまだ風邪特有の倦怠感は残っていて。
おとなしくベッドに身を沈めれば、意識はいとも簡単に落ちていった。




「ホントにおとなしく寝てるし。」

病人を起こすなんていうことはしたくない、という理由でゆっくりとベッドのそばに移動した。
すっかり温まったタオルを絞りなおしてもう一度イヨの額に乗せる。
冷たいタオルがやはり気持ち良いのか、少し顔が緩んだ。

「…だまってりゃ、かわいいよな。」

頬に手を当てれば、体温の高さが伝わってきて、手のひらが温まる。
実はイヨとケンタはお付き合い中というかそういう仲なのだが、未だ恋人らしいことということは皆無だ。
他の人には秘密だったりするせいもあるかもしれないが。
そんなことを考えていたからかもしれない。
ゆっくりと、無意識に、その少し高揚した頬に、ケンタはそっと口付けていた。
そして、ふと我に返る。

「―――っ!?」

即座にベッドから距離をとり、口を手の甲で押さえる。
イヨは、何もなかったかのように寝息をたて眠っている。

「俺、今何して…」

確か寝てる顔は可愛いよなとか思って、ほっぺに手あてて、それから―――
思い出して顔に火がともる。

「な、なぁ!?」
「…んう?……ケンちゃん…かえったにょー?」

今の声で起きたらしいイヨがこちらを見る。

「…どしたにょ?」
「な、なんでもねぇ!」
「顔赤いにょー、イヨの風邪うつったナリー?」

そういってイヨはにこにこと笑う。

「うつってねぇけど…うつすか?」
「へ…?」

今度はしっかりとベッドへ近づいて、もう一度、イヨの頬に手を当てる。

「へ、え、ちょ、ケンちゃん?」
「人にうつしゃ治るっつーけど、マジでうつしてみる?」

ゆっくり、顔が近づく。
イヨが思わず目を瞑ると、互いの唇が触れた。
そして、即座に離れた。

「ケンちゃ…っ」
「う、うつったらいーな!んじゃ、ひ、引き続き寝とけよ!俺はあみんち行くからなっ!」

バタン
イヨが何か言う前にケンタは逃げるように去っていった

「…熱上がりそうだにょ」

一人残されたイヨは一言ぽつりとつぶやく。
確かに先ほどより顔は赤くなり火照っていた。

今同じ顔で走っているケンタが熱を出すのはもうちょっと後の話。




空上 出雲様から「ドギマギラブラブ。ケンタが真っ赤になりながらも積極的」 でリクエストいただいていたものがようやく完成いたしました、が… なんというか申し訳ありません!!解釈をちょっと間違えているような…気が…します…。 ぐだぐだしてるし結局何が言いたいの的な一品ですがよろしければもらってやってくださいな… やっぱケンちゃんが積極的なのはニガテですね…。 07.07.31 back
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